AXC F 2152を使用したコントローラ冗長 – Applicative System Redundancy

AXC F 2152を使用したコントローラ冗長アプリケーション、Applicative System Redundancy (ASR)の紹介です。

PROFINETによる冗長システム

PROFINETには、冗長システムのための4つのコンポーネントがあります。
・メディア冗長(Media Redundancy)
・コントローラ冗長(Controller Redundancy)
・デバイス冗長(Device Redundancy)
・ネットワーク冗長(Network Redundancy)

PROFINET冗長については、Webサイト「PROFINET University」で解説されています。
PROFINET University Home
System Redundancy of PROFINET


今回はPLCnext Storeのライブラリ「ASR AXC F 2152」を使用し、2台のコントローラによる冗長システム(S2 Redundancy)を構築します。

Applicative System Redundancy(ASR) は、同じネットワーク内に 2 つの冗長 PLCを制御対象の IO ステーションと共に使用することにより実現されます。 PLC と IO ステーション間の通信は、PROFINET RTプロトコルを使用します。
2台のコントローラ (First/Second PLC) では同一のアプリケーション プログラムが動作しています。 1台のPLCはアクティブコントローラー (プライマリコントローラーとして機能) 、もう 1台のPLCはスタンバイコントローラー (バックアップコントローラーとして機能) です。
プライマリコントローラーが機器を制御し、 プライマリコントローラに障害が発生した場合またはその他のユーザー定義のスイッチオーバー条件が発生した場合、バックアップコントローラが機器の制御を引き継ぎます。
(ドキュメントより要点を抜粋し和訳)

PLCnext Info Centerにも情報がありますのでご参照下さい。

PLCnext Info Centerのリンク先が変更されていた事に伴い修正を行いました(2024.03)

このシステムにはMRP(Media Redundancy Protocol)対応イーサネットスイッチを使用したメディア冗長機能も実装されています。本記事ではMRPに関わる機器の設定についても紹介しています。

使用する機器

電源・ブレーカー・ケーブル等を除いた主要な機器のみ記載しています。

機器の接続

黄色い線の部分がMRPリングで、この中にバスカプラ&IOが存在します。その外に、冗長動作を行うコントローラ2台が接続されます。

機器ファームウェア・PLCnext Engneerバージョン

AXC F 2152のファームウェアバージョンは2023.0.0 LTS、PLCnext Engineerはバージョン2023.0.1を使用しています。

イーサネットスイッチのファームウェアバージョンは3.21です。

機器の設定

MRPマネージャ用イーサネットスイッチ(FL SWITCH 2308 PN)およびMRPクライアント用イーサネットスイッチ(
FL SWITCH 2008)に設定を行います。この設定はイーサネットスイッチのWeb管理画面を使用します。

各々のイーサネットスイッチにMRPマネージャまたはクライアント、MRPリングで使用するポートを設定します。

FL SWITCH 2308 PNはMRPマネージャ、リングポートは5, 6
FL SWITCH 2008はMRPクライアント、リングポートは1, 2

PLCnext Storeからライブラリ取得

PLCnext Storeよりライブラリ「ASR AXC F 2152」をダウンロードします。

PLCnext Store LIBRARY ASR AXC F 2152

PLCnext Storeのリンク先が変更されていた事に伴い修正を行いました(2024.03)

Documents->Englishフォルダ内にマニュアル(AN_ASR2152_rev06.pdf)
Filesフォルダにライブラリ
Files -> Exampleフォルダにサンプルプロジェクト(ASR2152_16_HF1_Demo__2023-01-18__16-23.pcweax)があります。

今回は、このライブラリに同梱されているサンプルプロジェクト(ASR2152_16_HF1_Demo__2023-01-18__16-23.pcweax)をベースにしてセットアップを行っています。

本記事ではプロジェクトの詳細については触れず、概要のみをご紹介します。
詳細につきましては別記事「AXC F 2152を使用したコントローラ冗長 – ASRプロジェクト詳細編」で紹介しています。

コントローラの冗長設定

サンプルプロジェクトでは既に設定されていますが、以下のような形で冗長設定と2台のコントローラの設定を行っています。

サンプルプロジェクト編集

今回用意したハードウェアとサンプルプロジェクトとの大きな差異は
・コントローラ接続されるIOデバイスの有無
・MRPループ内のリモートIOユニット2台→1台
です。

ここではプロジェクト編集の概要のみを説明します。
詳細については別記事(ASRプロジェクト詳細編)で説明していますのでご参照下さい。

  • PLANT(プロジェクトツリー)内の、今回使用しないバスカプラ及びDIOモジュールを削除
  • IOモジュール AXL F DI8/1 DO8/1の追加
  • 使用しないプログラム及びプログラムインスタンスの削除

その他に、既存プログラムであるMainApplication/MainRedundancy/MainSystemを実態(装置構成)に合わせて修正、出力(LED)制御やHMI画面処理用のプログラム作成を行っています。

プロジェクトダウンロード

PLCnext Engineerをコントローラに接続し、プロジェクトをコントローラにダウンロードします。
今回のシステムでは接続するコントローラが2台存在しますので、接続にあたってコントローラの選択が必要です。

コントローラとPLCnext Engineerの接続は1対1です。2台のコントローラと同時に接続する事は出来ません。

Cockpit画面上部プルダウンメニューを使用し、接続先コントローラを選択します。
TCI/IPが1台目のコントローラ、TCP/IP Backupが2台目のコントローラです。

接続先コントローラを切り替えた場合、プロジェクトのリビルドを必ず行う必要があります。

PLCnext Info Centerのドキュメントに
Note: After switching the communication path, a rebuild of the project’s program code is essential!
とありますが、「switching the communication path」がターゲットコントローラの切り替えを指しています。

切り替え操作後には必ずプロジェクトのリビルドを実行し、その後ダウンロードを行って下さい。

動作

DIOモジュール左側は、2台のコントローラの運転状態を表示しています。4列あるLEDの右側2列が出力ポートで、上から3ビットがプライマリコントローラの位置を表示、最下位の4ビット目はコントローラ間のデータ同期の状態を表示しています。

現在は1stコントローラがプライマリとして動作。2台のコントローラ間でデータの同期が取れている事になります。

DIOモジュール右側ですが、下段2ビットはプログラムから常時ON出力。上位側6ビットは1秒間隔で出力位置がローテーションするようにしています。

動画

コントローラのイーサネットケーブルの挿抜で切り替えを発生させた際の動画です。動画サイズ縮小のため編集しておりますが、切り替え動作が行われている状態をご確認いただけます。

切り替え(1.00秒)
データ同期断(6.10秒)
データ同期復旧(10.20秒)
切り替え(15.00秒)

HMI画面

AXC F 2152のWebサーバ機能を使用し、2台の冗長コントローラのうちどちらがプライマリとして動作しているか、2台のコントローラ間のデータ同期状態、併せて、ネットワークの接続状態をWeb HMI画面に表示しています。

以下の状態は、PROFINETバスカプラとイーサネットスイッチ間の接続が切れている事を示しています。

MRPループ内のバスカプラとスイッチの接続が切れても、PROFINET IO制御は継続されます。

次の状態は、バックアップ側の2ndコントローラとイーサネットスイッチ間の接続が切れている事を示しています。
両コントローラ間の通信は切れているため、データ同期状態を示す表示はFALSEになっています。

以上です。

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