AXC F 2152を使用したコントローラ冗長アプリケーション、Applicative System Redundancy (ASR)の紹介です。
PROFINETによる冗長システム
PROFINETには、冗長システムのための4つのコンポーネントがあります。
・メディア冗長(Media Redundancy)
・コントローラ冗長(Controller Redundancy)
・デバイス冗長(Device Redundancy)
・ネットワーク冗長(Network Redundancy)
今回はPLCnext Storeのライブラリ「ASR AXC F 2152」を使用し、2台のコントローラによる冗長システム(S2 Redundancy)を構築します。
Applicative System Redundancy(ASR) は、同じネットワーク内に 2 つの冗長 PLCを制御対象の IO ステーションと共に使用することにより実現されます。 PLC と IO ステーション間の通信は、PROFINET RTプロトコルを使用します。
2台のコントローラ (First/Second PLC) では同一のアプリケーション プログラムが動作しています。 1台のPLCはアクティブコントローラー (プライマリコントローラーとして機能) 、もう 1台のPLCはスタンバイコントローラー (バックアップコントローラーとして機能) です。
プライマリコントローラーが機器を制御し、 プライマリコントローラに障害が発生した場合またはその他のユーザー定義のスイッチオーバー条件が発生した場合、バックアップコントローラが機器の制御を引き継ぎます。
(ドキュメントより要点を抜粋し和訳)
PLCnext Info Centerにも情報がありますのでご参照下さい。
使用する機器
- コントローラ:AXC F 2152 – 2404267(2台)
- MRPマネージャ用イーサネットスイッチ:FL SWITCH 2308 PN – 1009220
- MRPクライアント用イーサネットスイッチ:FL SWITCH 2008 – 2702324
- PROFINETバスカプラ:AXL F BK PN TPS – 2403869
- IOモジュール:AXL F DI8/1 DO8/1 – 2701916(2台)
機器の接続
黄色い線の部分がMRPリングで、この中にバスカプラ&IOが存在します。その外に、冗長動作を行うコントローラ2台が接続されます。
機器ファームウェア・PLCnext Engneerバージョン
AXC F 2152のファームウェアバージョンは2023.0.0 LTS、PLCnext Engineerはバージョン2023.0.1を使用しています。
イーサネットスイッチのファームウェアバージョンは3.21です。
機器の設定
MRPマネージャ用イーサネットスイッチ(FL SWITCH 2308 PN)およびMRPクライアント用イーサネットスイッチ(
FL SWITCH 2008)に設定を行います。この設定はイーサネットスイッチのWeb管理画面を使用します。
各々のイーサネットスイッチにMRPマネージャまたはクライアント、MRPリングで使用するポートを設定します。
PLCnext Storeからライブラリ取得
PLCnext Storeよりライブラリ「ASR AXC F 2152」をダウンロードします。
PLCnext Store LIBRARY ASR AXC F 2152
Documents->Englishフォルダ内にマニュアル(AN_ASR2152_rev06.pdf)
Filesフォルダにライブラリ
Files -> Exampleフォルダにサンプルプロジェクト(ASR2152_16_HF1_Demo__2023-01-18__16-23.pcweax)があります。
今回は、このライブラリに同梱されているサンプルプロジェクト(ASR2152_16_HF1_Demo__2023-01-18__16-23.pcweax)をベースにしてセットアップを行っています。
コントローラの冗長設定
サンプルプロジェクトでは既に設定されていますが、以下のような形で冗長設定と2台のコントローラの設定を行っています。
サンプルプロジェクト編集
今回用意したハードウェアとサンプルプロジェクトとの大きな差異は
・コントローラ接続されるIOデバイスの有無
・MRPループ内のリモートIOユニット2台→1台
です。
ここではプロジェクト編集の概要のみを説明します。
詳細については別記事(ASRプロジェクト詳細編)で説明していますのでご参照下さい。
- PLANT(プロジェクトツリー)内の、今回使用しないバスカプラ及びDIOモジュールを削除
- IOモジュール AXL F DI8/1 DO8/1の追加
- 使用しないプログラム及びプログラムインスタンスの削除
その他に、既存プログラムであるMainApplication/MainRedundancy/MainSystemを実態(装置構成)に合わせて修正、出力(LED)制御やHMI画面処理用のプログラム作成を行っています。
プロジェクトダウンロード
PLCnext Engineerをコントローラに接続し、プロジェクトをコントローラにダウンロードします。
今回のシステムでは接続するコントローラが2台存在しますので、接続にあたってコントローラの選択が必要です。
Cockpit画面上部プルダウンメニューを使用し、接続先コントローラを選択します。
TCI/IPが1台目のコントローラ、TCP/IP Backupが2台目のコントローラです。
PLCnext Info Centerのドキュメントに
Note: After switching the communication path, a rebuild of the project’s program code is essential!
とありますが、「switching the communication path」がターゲットコントローラの切り替えを指しています。
切り替え操作後には必ずプロジェクトのリビルドを実行し、その後ダウンロードを行って下さい。
動作
DIOモジュール左側は、2台のコントローラの運転状態を表示しています。4列あるLEDの右側2列が出力ポートで、上から3ビットがプライマリコントローラの位置を表示、最下位の4ビット目はコントローラ間のデータ同期の状態を表示しています。
現在は1stコントローラがプライマリとして動作。2台のコントローラ間でデータの同期が取れている事になります。
DIOモジュール右側ですが、下段2ビットはプログラムから常時ON出力。上位側6ビットは1秒間隔で出力位置がローテーションするようにしています。
動画
コントローラのイーサネットケーブルの挿抜で切り替えを発生させた際の動画です。動画サイズ縮小のため編集しておりますが、切り替え動作が行われている状態をご確認いただけます。
切り替え(1.00秒)
データ同期断(6.10秒)
データ同期復旧(10.20秒)
切り替え(15.00秒)
HMI画面
AXC F 2152のWebサーバ機能を使用し、2台の冗長コントローラのうちどちらがプライマリとして動作しているか、2台のコントローラ間のデータ同期状態、併せて、ネットワークの接続状態をWeb HMI画面に表示しています。
以下の状態は、PROFINETバスカプラとイーサネットスイッチ間の接続が切れている事を示しています。
次の状態は、バックアップ側の2ndコントローラとイーサネットスイッチ間の接続が切れている事を示しています。
両コントローラ間の通信は切れているため、データ同期状態を示す表示はFALSEになっています。
以上です。